「同棲を始めたいけど、税金面で損をしないか心配……」
そんな不安を抱えているカップルも多いのではないでしょうか。
同棲や事実婚は、自由なライフスタイルとして選ぶ人が増えています。しかし、税金や社会保険の面では、法律婚とは異なる扱いを受けるため、知らずにいると大きな損をしてしまうことも。
この記事では、同棲や事実婚における税制上のデメリットと、知っておくべき注意点を詳しくお伝えしていきます。
将来を見据えたパートナーとの生活を賢く設計するため、ぜひ最後までチェックしてみてください!

同棲や事実婚のカップルが最も知っておくべきなのが、法律婚の夫婦と比べて受けられない税制優遇があるという点です。
ここでは、具体的にどのような優遇措置が適用されないのかをお話ししていきます。
法律婚の夫婦であれば、パートナーの年収が一定額以下の場合に「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を受けることができます。
これは税金の負担を軽くする制度で、所得税や住民税が安くなる仕組みです。
ところが、同棲や事実婚の場合、この控除は一切受けられません。なぜなら、税法上の「配偶者」とは、民法の規定により婚姻届を提出した配偶者を指すからです。
婚姻期間の長さは関係なく、1か月でも30年でも婚姻届を出していれば配偶者控除の対象となります。
しかし、どれだけ長く一緒に暮らしていても、婚姻届を出していなければ税法上は「他人」として扱われてしまうのです。
「生計を一にする」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは税法上の重要な概念で、「同じ財布で生活している」という意味を持ちます。
配偶者控除は婚姻届を出した配偶者にのみ適用されますが、扶養控除は親や子どもなど、一定の親族で生計を一にする人に適用される制度です。同居の有無は問いません。
ただし、同棲カップルの場合は民法上の「親族」に該当しないため、どちらの控除も受けられないという二重の不利があります。
たとえば、一方が年収103万円以下で働いていても、もう一方の扶養に入ることはできません。結果として、法律婚の夫婦と比べて税負担が重くなってしまうわけです。
税制上の不利は、相続や贈与の場面でも顕著に現れます。
法律婚の配偶者であれば、相続税において最大1億6,000万円または法定相続分相当額までは相続税が非課税となる「配偶者の税額軽減」という制度があります。
また、配偶者への贈与についても、一定の条件下で2,000万円まで非課税となる「贈与税の配偶者控除」が用意されているのです。
しかし、事実婚のパートナーは法定相続人になれないため、これらの優遇措置を一切受けられません。
パートナーが亡くなった場合、遺言で財産を受け取ることはできますが、相続税の配偶者控除は適用されないため、多額の税金を支払うことになる可能性があります。将来的な財産の承継を考えると、これは非常に大きなリスクといえるでしょう。

「扶養」という言葉は日常的によく使われますが、実は税法上の扶養と社会保険上の扶養では、その意味や条件が大きく異なります。
ここでは、同棲カップルがそれぞれの扶養にどう関わるのかを整理していきます。
まず知っておきたいのは、税法上の扶養と社会保険上の扶養は全く別の制度だということ。
税法上の扶養は、配偶者控除や扶養控除など、所得税や住民税を計算する際に使われる概念です。一方、社会保険上の扶養は、健康保険や年金の被扶養者になれるかどうかという話になります。
税法上の扶養の場合、年収要件は48万円以下(給与所得者なら103万円以下)。
しかし社会保険上の扶養は、年収130万円未満という基準が設けられています。また、税法では同居要件はありませんが、社会保険では一部の親族について同居が必要になるケースもあるのです。
このように、両者は基準も目的も異なるため、混同しないように注意が必要ですよ。
実は、事実婚のパートナーでも健康保険の被扶養者として認められる場合があります。
これは税法とは異なる大きなポイントです。
条件としては、住民票の続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載されていることと、年収が130万円未満であることが求められます。さらに、事実婚の関係が婚姻関係に準じていると認められる必要があるのです。
具体的には、同居していること、婚姻の意思が双方にあること、社会的にも夫婦として認められていることなどが総合的に判断されます。
手続きには、住民票の写しや内縁関係にあることを証明する書類などが必要です。
会社によって必要書類が異なる場合もあるため、事前に人事部門や社会保険労務士に確認しておくことをおすすめします!
では、扶養に入れない場合、実際にどれくらいの負担増になるのでしょうか。
たとえば、法律婚の夫婦で妻が夫の扶養に入っている場合を考えてみましょう。
妻は健康保険料を払わずに済み、国民年金の第3号被保険者として年金保険料も免除されます。また、夫は配偶者控除により所得税・住民税が年間で数万円から十数万円安くなるのです。
一方、同棲カップルで扶養に入れない場合、パートナーは自分で国民健康保険料と国民年金保険料を支払う必要があります。
この合計額は年収や自治体によって異なりますが、年間30万円から50万円程度になることも珍しくありません。
さらに、税制上の控除も受けられないため、所得税・住民税の負担も増加します。長期的に見ると、かなり大きな金額差になってしまうわけですね。

同棲を始める際、意外と見落としがちなのが住民票の世帯構成です。
同一世帯にするか、それとも別世帯にするかによって、税金や社会保険、各種手当の扱いが変わってくるため、慎重に検討する必要があります。
住民票には「世帯主」と「続柄」という項目があり、ここにどう記載するかで様々な影響が出てきます。
世帯とは「住居及び生計を共にする者の集まり」のことを指すのです。
同一世帯として届け出た場合、世帯主以外の人は世帯主との関係が続柄に記載されます。事実婚の場合は「妻(未届)」「夫(未届)」という記載が可能です。
この記載があると、前述のとおり健康保険の被扶養者として認められやすくなります。
一方で、別世帯として届け出た場合、それぞれが独立した世帯主となるため、国民健康保険料などは個別に計算されることに。
また、児童手当や住宅手当など、世帯単位で判定される公的給付や会社の手当にも影響が出る可能性があるのです。このように、世帯構成の選択は単なる形式的な問題ではなく、実際の経済的負担に直結していきます。
世帯分離を選ぶメリットとしては、国民健康保険料が所得に応じて計算される点が挙げられます。
一方の収入が高く、もう一方の収入が低い場合、別世帯にすることで低所得者の保険料負担が軽減される可能性があるのです。
また、住宅手当や家賃補助などの制度が「世帯主」に対して支給される場合、それぞれが世帯主になることで両方が受給できるケースもあります。
ただし、デメリットもあります。
たとえば、健康保険の被扶養者として認められにくくなること。また、公営住宅の入居基準など、世帯単位での所得制限がある場合、合算されないことでかえって不利になる場合もあるのです。
さらに、将来的に婚姻届を出す際に、住民票の移動や変更手続きが複雑になる可能性もあります。どちらを選ぶべきかは、それぞれの収入状況や将来設計によって変わってくるため、しっかりシミュレーションしてみることが大切です!
会社から支給される「家族手当」や「配偶者手当」は、多くの場合、法律上の配偶者を対象としています。
そのため、事実婚のパートナーは対象外となるケースが大半です。
これは企業の就業規則や給与規定によって定められているため、会社によって扱いが異なります。一部の企業では、事実婚のパートナーも対象とする規定を設けているところもありますが、まだ少数派といえるでしょう。
公務員の場合、「一般職の職員の給与に関する法律」で扶養手当の範囲が定められており、事実婚の配偶者も対象となる可能性があります。
ただし、住民票の「未届」記載や、年収130万円未満などの条件を満たす必要があるのです。
このように、会社手当については勤務先の規定を事前に確認しておくことが重要。場合によっては、手当の有無が年間で数十万円の収入差になることもあるため、見落とせないポイントですよ!

法律婚の夫婦であれば、様々な費用を合算して控除を受けられますが、同棲カップルの場合はそうはいきません。
ここでは、特に注意が必要な控除について詳しく見ていきましょう。
医療費控除は、年間の医療費が10万円を超えた場合に所得控除を受けられる制度です。
重要なのは、「自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族」の医療費が対象となる点。
ここでいう「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味するわけではなく、同じ財布で生活しているかどうかがポイントになります。別居していても、生活費の仕送りがあれば「生計を一にする」と認められるケースもあるのです。
しかし、同棲カップルは民法上の「配偶者」でも「親族」でもないため、たとえ生活費を共有していても、お互いの医療費を合算して控除を受けることはできません。
つまり、それぞれが個別に10万円を超えない限り、控除の対象にならないということ。これは法律婚の夫婦と比べて、大きな不利となってしまいます。
生命保険料控除や地震保険料控除も、支払った保険料に応じて所得控除を受けられる制度です。
ここで注意したいのが、保険料控除の対象となるのは「自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族」が契約者や被保険者となっている保険に限られるという点。
具体的には、保険料を実際に支払っている人と、保険契約者・被保険者の関係が重要になってきます。
たとえば、法律婚の夫婦であれば、夫がパートナーを被保険者とする生命保険に加入し、その保険料を夫が支払っている場合、夫の所得から保険料控除を受けることが可能です。
しかし、同棲カップルの場合、パートナーは「配偶者」でも「親族」でもないため、パートナーを被保険者とする保険の保険料は控除の対象にならないのです。
このため、保険の契約形態には十分な注意が必要ですよ。
寄付金控除は、ふるさと納税などで寄付をした場合に受けられる控除制度。
これも実際に寄付を行った本人しか控除を受けられません。
法律婚の夫婦であれば、世帯としてどちらか一方がまとめて寄付を行い、所得の高い方で控除を受けるという戦略が取れます。しかし、同棲カップルの場合は、それぞれが個別に寄付と控除の申告をする必要があるのです。
住宅ローン控除についても同様。
住宅を購入する際、法律婚の夫婦であれば共有名義にして、それぞれが住宅ローン控除を受けることができます。
ところが、同棲カップルの場合、共有名義にすることは可能ですが、それぞれの出資割合と名義の割合が一致していないと、贈与税の問題が発生する可能性があります。
たとえば、片方が全額出資したのに名義を半分ずつにした場合、実質的に半分を贈与したとみなされる恐れがあるのです。このように、名義の扱いには細心の注意を払う必要があります!

同棲カップルが特に気をつけたいのが、お金のやり取りに関する贈与税のリスク。
知らないうちに贈与税の対象になってしまうケースもあるため、しっかり理解しておくことが大切です。
法律では、扶養義務者間で生活費や教育費に充てるために贈与された財産は、贈与税の課税対象にならないと定められています。
ここでいう扶養義務者とは、配偶者、直系血族(親子など)、兄弟姉妹、そして家庭裁判所の審判で扶養義務者となった三親等内の親族のこと。
ところが、同棲カップルは法律上の配偶者ではなく、親族でもないため、この非課税制度の対象外となってしまいます。
さらに重要なのは、たとえ扶養義務者間であっても、生活費として贈与されたお金を貯金や投資に回した場合は、贈与税の課税対象になってしまうという点です。
つまり、「必要な都度、直接生活費や教育費に充てる」という使い方をしなければ、非課税にはなりません。同棲カップルの場合、そもそも非課税の対象外ですから、大きな金額のやり取りには特に注意が必要なのです。
同棲生活では、家賃や光熱費、家具・家電の購入など、様々な支出を共有することになります。
このとき、どちらか一方が全額を負担している場合、実質的にもう一方への贈与とみなされる可能性があるのです。
贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、これを超える金額を一方的に負担すると、贈与税の申告が必要になってしまいます。
対策としては、家賃や光熱費などを収入に応じて按分し、それぞれが自分の負担分を支払うという方法があります。
たとえば、一方が6割、もう一方が4割というように、負担割合を決めておくわけです。
そして重要なのが、支払いの記録を残しておくこと。銀行振込やクレジットカード決済など、証拠が残る方法で支払いを行い、どちらがいくら負担したかを明確にしておくことをおすすめします!
同棲期間中に一方がもう一方へ多額の資金援助を行っていた場合、将来結婚したときにその事実が税務署に発覚するリスクがあります。
特に、不動産の購入資金や投資資金など、大きな金額が動いた場合は要注意です。
税務署は、不動産登記や金融機関の情報から、資金の流れをチェックすることができます。もし過去に贈与税の申告をしていなかった場合、無申告加算税や延滞税が課される可能性もあるのです。
このようなリスクを避けるため、大きな金額を援助する場合は、贈与契約書を作成しておくことが賢明。
また、年間110万円の基礎控除の範囲内で少しずつ贈与するという方法もあります。
さらに、将来結婚することを前提としているなら、援助ではなく「貸付」という形にして、借用書を作成しておくという選択肢もあるでしょう。いずれにしても、お金のやり取りには記録を残し、後々トラブルにならないよう備えておくことが大切ですよ!

同棲や事実婚のカップルにとって、最も大きなリスクとなるのが相続の問題。
法律婚の配偶者であれば当然に相続権がありますが、事実婚のパートナーにはその権利がありません。ここでは、そのリスクをどう回避するかをお伝えしていきます。
民法では、配偶者は常に相続人となると定められていますが、ここでいう配偶者とは法律上の配偶者のみ。
つまり、どれだけ長く一緒に暮らしていても、事実婚のパートナーは法定相続人にはなれないのです。
仮にパートナーが亡くなった場合、その財産は親や兄弟姉妹など、法定相続人に相続されることになります。
長年連れ添ったパートナーが何も受け取れないという事態も起こり得るわけです。
この問題を解決する最も確実な方法が、遺言書の作成。
公正証書遺言として作成しておけば、パートナーに財産を遺贈することができます。ただし、遺言で財産を受け取る場合でも、相続税の配偶者控除は適用されないため、法律婚の配偶者よりも多額の相続税を支払う必要がある点には注意が必要です。
さらに、被相続人に子どもがいる場合、遺留分の問題も発生します。
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の相続分のこと。子どもがいる場合、遺言でパートナーに全財産を遺贈しても、子どもは遺留分を請求できるため、完全にパートナーに財産を残すことは難しいケースもあるのです。
相続の問題を補完する手段として、生命保険の活用が非常に有効です。
生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産とされるため、相続財産には含まれません。つまり、遺言がなくても、保険金受取人に指定しておけば、確実にパートナーに保険金を残すことができるのです。
ただし、保険会社によっては、事実婚のパートナーを受取人に指定できない場合もあります。
最近では、住民票の「未届」記載があれば受取人として認める保険会社も増えてきましたが、すべての会社で可能というわけではありません。事前に保険会社に確認し、必要に応じて受取人の変更手続きを行っておくことが重要です。
また、死亡保険金には相続税が課税されますが、法定相続人が受け取る場合には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。
しかし、事実婚のパートナーは法定相続人ではないため、この非課税枠は適用されず、全額が課税対象となってしまう点も覚えておきましょう。
事実婚のパートナー関係を公的に証明する方法として、住民票の続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載してもらう方法があります。
この記載があれば、様々な場面で事実婚の関係を証明することができるのです。
具体的には、前述のとおり健康保険の被扶養者認定や、生命保険金の受取人指定などに活用できます。また、遺族年金の請求時にも、事実婚の関係を証明する重要な書類となるのです。
さらに、医療現場での同意や面会など、配偶者として扱われる必要がある場面でも有効。
病院によっては、婚姻届を出していないと手術の同意書にサインできないというケースもありますが、「未届」記載のある住民票を提示することで、配偶者に準じる扱いを受けられる可能性が高まります。
住民票の続柄変更は、市区町村の窓口で手続きが可能です。
双方の戸籍謄本や、事実婚の関係を証明する書類(事実婚契約書や賃貸契約書など)が必要になる場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズですよ!

同棲や事実婚は、法律婚と比べて税金や社会保険の面で様々なデメリットがあることをお伝えしてきました。
配偶者控除や配偶者特別控除が受けられず、相続税の配偶者控除も適用されないため、長期的には大きな経済的負担の差となってしまいます。
一方で、健康保険の被扶養者として認められたり、遺族年金を請求できたりするなど、一部では法律婚と同様の保護が受けられる制度もあるのです。
重要なのは、これらの違いをしっかり理解した上で、自分たちに合った生活設計を行うこと。
住民票の「未届」記載や遺言書の作成、生命保険の受取人設定など、できる対策は確実に行っておくことをおすすめします!
また、将来的に結婚を考えているなら、お金のやり取りには記録を残し、贈与税のリスクを回避しておくことも大切。
同棲や事実婚を選ぶなら、そのメリットとデメリットを十分に理解し、賢く備えていきましょう!